マジシャンなので仕事上、「錯覚」とか「思い込み」とか「脳をダマす」とかに
ものすごく興味を惹かれます。
マジック界にはこんな言葉があります。
「マジックが起こるのは指先ではなく、観客の頭の中である。」
マジックは観客の頭の中、つまり脳に対して錯覚を駆使して、
それを不思議な現象だと思い込ませるのです。
これって何も特別なことはなく、脳はそもそも錯覚を起こしやすいんです。
だって脳は自分さえもダマしているんですから・・・
思考のトラップ ~脳があなたをダマす48のやり方~

デイヴィッド・マクレイニー/著 安原和見/訳
人間の思考や行動のパターンの錯覚、バイアス(偏り)、間違いなどが
解説されている心理学の本です。
さまざまな認知バイアス、論理的誤謬、ヒューリスティック…… 人間は気づかぬうちに脳にダマされている!?
奇妙な心のカラクリを解き明かす48の鋭い考察。
原題は“You are not smart”(あなたは賢くない。)
その意味通り、どれだけ自分の脳が賢くないのか、いいかげんなのか
この本を読むと分かってしまいますよ。
だってこんな内容なのですから↓
非常時にはみんなパニックになる。
人は物事を合理的で客観的に判断している。
ストレス解消にはガス抜きするのがいちばん。
複数の人で話し合ったほうが問題を解決できる。
他人の行動にはその人の性格が反映されている。
↓
……ぜんぶウソです。人はそんなに賢くない
人はそんなに賢くない
心理学の本は専門的で読みこなすのが大変なものも多いですが、
この本は具体例がコラム形式で書かれていて、
実体験に基づいて感覚で理解できるわかりやすい内容です。
48章からなり、
それぞれの章は”人間が勘違いしていること【ウソ ×】” と
”真実【ホント 〇】”で始まります。
例えば、
32 誤情報効果
ウソ× 記憶は録音のように再生できる。
ホント〇 思い出すたびごとにそのとき手元にある情報をもとに記憶は再構成される。
そのため現在の影響をきわめて受けやすい。
例えば友人との間に記憶の行き違いがあったことはありませんか?
人間の記憶は実はとてもあいまいで、
思い出すたびに再構成されたり、
他人や思い出すときの環境によっても変化してしまうのです。
『いや、俺はそんなことはない!』って?
では、本誌内の実験をしてみましょう!
実験してみよう
まずは紙と鉛筆を用意して下さい。
次にあげる単語のリストを1度だけ読んで、
その後は見ないで思い出せる限り書き出してみましょう。
さあどうぞ↓
ドア、ガラス、格子、ブラインド、桟、敷居、家、開く、カーテン、枠、眺め、そよ風、サッシ、網戸、雨戸
さぁ、思い出して書いてみましょう。
さぁ、いくつ書けましたか?
それでは答え合わせ。
例えば『窓』と書いていませんか?
単語のリストの『窓』はありません。
このテストを行うと、85%の人が『窓』という単語があったと思い込みます。
これが誤情報効果です。
よく事件の目撃者の証言が食い違ったり、
例えば見たことのないものを証言してしまったりするのは、
質問の内容や外界の情報によって記憶が改ざんされてしまうからなのですね。
様々な実験により、実際には経験していないことを自分の経験だと思い込ませたり、
記憶の改ざんが容易にされたりすることが分かっています。
そしてなにより、
改ざんされた記憶は、その人にとって【事実】だということ。
人の記憶なんてとてもいいかげんだということです。

自分のことを本当に分かっていますか?
その他にも実例をふくめ
様々な【思考のトラップ】がこの本には収められています。
他にも・・
1 プライミング効果
ウソ× 自分が何かの影響を受けているときはそれとわかるし、
そのために自分の行動がどう変わったかもわかる。
ホント○ 人は意識化に形成される観念から常に影響を受けていて、
しかも自分ではそれに気づいていない。
自分では何も変わっていないつもりでも、実は変わっていて、
でもそれに自分で気づいていないなんて・・
信じられないかもしれませんが、
自分のことなど本当に何も分かっていないということですね。
脳、そして人間の真の姿は、僕らが思っているものとは全然違うのです。
脳って、マジシャンみたいですね。
そういえば、本の始めにこんな1文がありました。
『人はみんなだまされている。しかしそれでいいのだ。
正気でいられるのはそのおかげだから。』
脳が自分をどうダマしているのか?
真実を知りたい人にはぜひオススメです。
この本を読んでも正気でいられる自信がありますか?
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ところで先ほど行った実験を覚えていますか?
単語リストを思い出すところです。
間違って『カーテン』と書きましたね。
それは間違った記憶ですよ。
あれ、『カーテン』だっけ?
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